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第37回つくばマラソンに出走 初サブスリーに挑戦(後編)

2017年11月29日
11月26日(日)第37回つくばマラソンに出走してきました。

第37回つくばマラソンに出走 初サブスリーに挑戦(前編)

Bブロック中盤に並んで号砲を待つ。
前方に2000人以上がいる。仮にサブ3となると500位前後になるはずだ。1500人を追い越さなければ達成は無い。「みんないい脚してるなぁ。エイドの物を食べずに走れるなんて最高の人達だな。」
と思っている内にあっという間にスタートの号砲。


やはり予想通りスタートゲートをくぐるのにロスタイムは39秒。40秒前後と考えていた。ここから5㎞区間は道幅も狭いため団子状態のレースが続く。行く手を塞ぐため人を交わしながら走行する。本来は流れに沿って無理はせず温存したいが、自分にそのタイムの余裕などない。行ってもギリギリのサブスリー。まして捕食もしなければならない。「食べる時間を稼ぎたい。」

あり得なく遅いランナーがたまにいて行く手を阻む。後半型なのだろうか。それともただ遅いのだろうか。
ただですら狭いのに腕を横に振るものもいて擦り抜けることも至難の業だ。脇腹にエルボーなんて食らったらあばら骨を折る危険性だってある。そんなリタイヤは嫌だ。
横から来て前に着く者も多い。
「せめて前にくるなら速く走れよ。チームにじいろTシャツなめるなよ。」
声には出さず、そう心の中で呟く。一応大人だ。

前が詰まり何度もブレーキがかかるためストレスが続く。
ただ脚の調子はいい。初めからラップタイムは4:10/㎞と決めていたが、1㎞過ぎで4:05/㎞〜4:10/㎞に変更する。
後はこのまま25㎞地点までは自動走行するまでだ。

今までの6レースの経験から、如何に30㎞まで脚を残すか。30㎞からが本当に辛いレースと言うことを学んだ。
何度か訪れる8㎞以降のランニングハイで気持ちが巡航速度を押し上げようとするが、ブレることはない。
「これは長丁場。焦るな。」
今回は、25㎞までは温存し毎回経験している後半の失速を防ぐ。逸る気持ちを抑え、淡々と走る。


10㎞地点から始まるエイドでの捕食は確実に行った。10㎞以降7㎞位ごとにおおよそ設置してあるはずだ。
1箇所目はバナナ、2箇所目は菓子パン、3箇所目はバナナ、4箇所目は菓子パン、その他オレンジ、ブルーベーリー...なんだかよく覚えていないが..。
お盆に各エイドのおばちゃんが差し出してくれる。マナーとしては速度を緩め取らなければならない。
それを一か八かの時速14㎞の速度で鷹のごとく取りに行く。お盆が揺れおばちゃんは慌てる。
「おばちゃんごめん。本当にごめん。おれには時間が無いんだ。決して育ちが悪いわけではないんだ。」
心の中で必死で謝り続ける。
食べるのもそうだが、取るのもかなり難しい。今度は動体視力を磨かなくてはならない。

後半、おしるこもあったがこれはパスした。スプーンで食べてる暇などない。給食の中でもバナナは食べやすいが、菓子パンは中々飲み込めない。口が乾き水も欲しくなる。
ただ贅沢は言ってられない。無いよりは100倍もましだ。

前の選手で捕食をする人など一人もいない。さすがエリートランナー達。心構えが違う。
何だか自分だけ置いてある給食を必死でつかみ取り頬張りながら走っている姿を想像すると笑えてきた。
現代文明を信じない原始人が現代人に挑んでいるように思えた。
「おれは食べて勝つ。」

ただ心配が常に付きまとう。いつものレースでは携帯ジェルをレース前に2個、レース中に3〜4個で600キロカロリー以上を口に入れるのだが、レース前の朝食を腹八分目に抑えた上にジェルも摂取できなかった。全エイドで捕食
できるだろうか。動体視力が狂えばゲットすることすら叶わない。取ったものはほぼ丸飲む状態だ。
噛まないと栄養にならないと子供の時親から言われてきたでは無いか。
仮に全てを摂ったとしてカロリーは一体どの位になるのだろう。いつもの半分はあるのだろうか。エネルギーに転嫁されるのは最低でも30分はかかる。物によっては1時間後かも知れない。それを考えるとゴールまで残り30分の35㎞以降の捕食は意味をなさない。いろいろな事が頭を過る。
後半のエネルギー切れに恐怖を感じながらも
「今出来ることを淡々とこなすしかない。この先あと何か所あるか解らない。鷹のごとく確実に捕食するしかない。」

速度を緩めることなく懸命に食べる。たぶん野生動物だって走りながら食べないだろう。

スタート時は気温が7度くらいだったが14度位にはなっただろうか。日差しが暑い。
水をかけるほどの暑さではないがランニングシャツになりたい気分だ。このゾーンを走る選手の多くはランニングシャツと短めのパンツを履いている。

以前はその意味がよく解らなかった。マラソンの古来からの風習なのか位にしか思っていなかった。でもこの速度で走るようになった今はその優位性が良く解る。風が抜けて快適なのだ。
以前は寒い日でもランニングシャツだなんてそんな風習に捉われておかしいとも思ったが決してそうでは無い。スピードランナーは運動量が多いため気温が10度以下でもレース中は暑いのだ。

このことについてレース数日前に悩んだ。
自分はチームTシャツは袖のあるものしか無い。袖を切ることを1度考えた。ただ、レース後にチームメイトから笑いネタにされるのは目に見えている。SNSで拡散される恐れだってある。
タイム如何に依っては逸話になる可能性もあるが、「もしもフィニッシュタイムが平凡だったなら..」など余計な考えが最後まで付きまとう。そんなことをウダウダ考えるなら、「潔く蒸れと汗と戦う。」そう決心した。

そんなことはともかく、「この時期に紅葉の中を半袖短パンで走られるなんてこんな幸せなことは無い。」と思いながら、気持ちはリラックスしている。周りの紅葉に目を向ける余裕もある。息も上がらず落ち着いている。とても気持ちがいい。



25㎞地点を越え、少しずつ脚が重くなってくる。
ここからが本当のマラソン。
ここからは予定では4:15/㎞まで落としフラットで行き、35㎞より更に4:20/㎞に落とす巡航計画。
しかしまた病気が始まる。
「悠々の3時間切りをしたい。余力を残してのフィニッシュなんてしたくない。何と言われようと速度を落とす気など毛頭無い!」二人の自分と葛藤していたが、そちらが圧倒的に強くそれに従う。

程なくして2㎞も進んだろうか急激に脚が前に向かなくなる。徐々にというよりもいつもそれは突然襲ってくる。
脚に力が入らなくなるというのだろうか、走りながら筋力不足を痛切に感じる。

これでは今までと何も変わらない。
気を少しでも抜けば、4:45/㎞まで一気に落ちる感じだ。一度速度を下げると再び上げることはほぼ皆無だということを普段の練習でよく知っている。サブスリーの道はそこで閉ざされてしまう。

そもそも21㎞以上をこの速度で走ったことが一度も無い。この速度で10㎞すら走れない日もある。

ただこれには事前対策があった。実践では試したことはないが。
練習時は1歩当たり1.0m位のピッチだが、大会の計測値を見ると1.15m位になっている。知らずに気合を入れ過ぎて蹴り上げているように思う。これが脚力を想定以上に消耗させる原因なのだと、大会の1か月前に自分なりに分析していた。

これを思ったのはチームメイトの応援に行った際に、その走り方にヒントを得た。「ストロークが小さいのに速度は速い。」家に帰りすぐに真似をして走ってみた。いい感じだ。
あえてピッチを0.95m以下にしその代わりに回転数を増やし速度を上げるのだ。これを何度も練習していた。
時折、走法を変え別の筋力で走り、筋肉を休ませた後に走法を戻すのだ。誰かに教えてもらった訳でもなくこれが正しいのかはわからないが、自分としては必然だった。
長い距離は流石に厳しいが、数キロ休むには十分な効果が期待できる。

これをすぐに実践した。なかなかいい感じだ。
心の中で「とにかく粘れー。ここから1キロずつ。その先のことは考えない。自分を信じるのみ。」何度も何度も心の中でそれを唱える。

この頃から別のアクシデントが起きていた。左足の裏の親指下の着地面の水膨れだ。走りながら水膨れが破れてくれればまだいいのだか、皮が厚くなっているため破れることなく皮膚の間の水が増えて行く。接地の衝撃と共に全体に水膨れの面積が広がっていくのがわかる。
着地すると激痛が走る。どんどん痛みがひどくなる。

これは春から続く左脚のアキレス腱の痛み原因だ。知らずにこれをカバーしようとするあまりに普段とは違うつま先着地で起こってしまう。走りながら痛くない着地部分を探るがどこも痛い。着地の度に皮がブヨブヨしズレているのが解る。足裏の外側で着地するようにして走るしかないのだが、そうなるとなかなか蹴り出せずスピードに乗れない。
「まぁその内走ることの辛さがこの痛みを上回るだろう。とにかく意識を外に向けろ。ここまで来たら走るしかないんだから。」そう自分に言い聞かす。


35㎞以降はさすがに辛かった。とにかく脚が怠い。前に脚が向かない。完全に身体のリミッターが作動して走る行為を止めさせようとしている。何度も立ち止まりたい気持ちに襲われる。お腹が空いた。腕の振り過ぎなのか力の入り過ぎなのか腕が痛い。

ここからはもう精神的支配がほとんどになっている。ここからは根性。最後まで諦めなかったものだけがサブスリーの栄冠を手にする。
「ここからは、自分のためではない。今まで支えてくれた人達に感謝を込めて走り抜くんだ。」と気合を入れる。

38㎞地点でサブスリーが見えて来た。自分の中では逆算して確信している。「もう間違いない。後はどこまでタイムを伸ばせるか。58分を切ることはできないか。そこを目指す!」
息は上がることなく呼吸は楽だ。パワーブリーズで横隔膜筋を鍛えたせいだろうか。
今までは腹筋が筋肉痛になり走っていて痛いのだがそれも無い。筋トレに腹筋を取り入れた成果が出たのだろう。


最後の40㎞からの2.195㎞は再び走り始めの4:10/㎞に戻すとレース前に決めていた。これにより後半にも強いということを自信にし、過去を払拭したかった。
残りの力を絞り出す。ただ思い通りにタイムが上がらない。

最後195m、残りのすべてで走る。この日最速の4.02/㎞。

2:58:49 ゴールとともに一気に涙があふれ出てきた。

こんな経験は走っていて一度もない。
今年春のウルトラ100㎞マラソンの時のゴールだってこんな感動は無かった。

「夢を叶えるのに遅すぎるということはない。」


最後に
今まで支えてくれ、理解を頂いた皆様に心から感謝致します。
本当にありがとうございました。

【記録】
タイム(グロス) 2:58:49
タイム(ネット) 2:58:10
総合順位 555位



【今後】
以前からもし自分が夢のサブスリーを達成したなら、タイムを追い求める走りは止めると心に決めていました。
速度を追い求めるほどに日々トレーニングが厳しくなり、気持ちの休まる日が少ない。休日となれば午前に飽き足らず午後からも走りに行く日々。ゴール後何を思うのだろうそれが楽しみでもありました。

ただ達成して思ったのは、ただの通過点。エリートランナーの称号サブスリーランナーとは世間が作ったもの。
まだ前には500人もいた。何人にも後半抜かれた。悔しい。もっと努力してもっと速くなりたい。
もしかしたらこれが自分にとっての幸せなのかも知れない。

次の目標 
来年5月の洞爺湖マラソン 2時間54分59秒