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2022バックヤードウルトラ ラストサムライスタンディング北海道に初参戦

2022年12月21日
2022バックヤードウルトラ ラストサムライスタンディング(Backyard Ultra Last Samurai Standing)北海道に初参戦

今年9月に初めてバックヤードウルトラという大会をエントリー受付開始の記事で知った。このレースは世界50カ国で開催されており、日本では2020年より年に1度開催。今年は11月19日に東京、福島、群馬、京都、島根、北海道、6都道府県で同時開催される。出場者は開催地各30人とし、申し込み者の中から審査の上で決定されるとある。

大会のルールは1時間ごとの一斉スタートで決められたコース6.706mを走り、このループを最後の1人になるまで続行される。1時間以内で走り切れなければそこでリタイア(DNF)となる。1時間で走る距離は24時間走ると100マイル(160.944㎞)となるように設定されている。各開催地での優勝者は2024年開催のサテライト大会(日本代表選手として)へ招待され、そこで優勝したものがアメリカの世界大会「Big’s Backyard Ultra」へのゴールデンチケットを手にすることができるようだ。

自らの限界に挑戦できるのかと思うと胸が高鳴る。迷わず申し込みをした。


この大会の難しさは1時間ごとの定刻にスタートし、制限時間の1時間以内に走る距離が6.706㎞と決まっている点にある。1時間の制限時間内であれば走る速度は自由だがその時間の中には食事や着替え、トイレタイムなど全てが含まれる。1時間をどのように利用するかが鍵になる。

まずは対策するために軸を決める必要がある。そこで目標を50ループ(時間)/333.5㎞と定めた。次にこの50時間の天気予報(天候/気温)を確認し、休憩場所、食事を摂る時間、食事の内容、量、着替え等のアイテム、ラップ(時間)毎の走行速度を割り出す。走行速度は休憩時間に直結する。走行速度の決定は、毎時6.706m走りこれを50時間続け、335㎞を走るという時間と距離の両面から見る必要がある。長距離を走る上で速度を抑えて走るほど脚力の負担が少なく後半優位に働くが、動いている時間が長い分その他身体の疲労や睡魔との戦いにもなる。

自分の中で一番の不安要素は睡魔である。45時間走り続けた経験はあるがそれから先は未知数だ。この道のベテランはレース中に数分間目を閉じて寝る技術を身につけているが、自分はレース中の興奮が邪魔をし寝ることができない。できることなら今回のレース中に習得をしたい。

それ以外は今までの経験を照らし合わせるとクリアできる可能性が高い。鬼門は睡魔である。睡魔という不安要素を少しでも取り除くために以下の計画とする。

この大会では選手はループを終えて、次のスタートまでの間はサポートクルーによるサポートを受けることが認められている。自らも長距離に精通したサポートクルー(サポート者)を選び、チームとして戦うことがより優位に働くと考え、最も信頼の於ける仲間に依頼する。走る者とサポート者は意思の疎通がなければ上手くは行かない。事前に自ら食事を摂る時間や食事の内容を定め、ループを終える時刻を表に取りまとめる。これにより自分は走ることのみに専念し次のスタート時間まで体力を温存する。当日の天候は4〜10度で時折雨と強い風が予想されているため、一定の室温で余計な気苦労を排除するため休憩を車内とする。

◎事前に作成した予定表


次に大会に向けたトレーニングを考える。

昨年はコロナ渦で大会の中止や延期が相次いだため、ゆっくりしたペースでのランを楽しみ年間8,700㎞走ったおかげで随分と長い距離への耐性が付いた。今年は100マイルトレイルレース3本を始め、24時間走や200㎞を越えるジャーニーランの大会2本で経験を得ることができた。

休日を除いては毎日15〜20㎞走るのが日課だが、レース対策として1か月前より距離と速度をレースに合わせ走ることとした。毎日走るコースをレース距離の6.7㎞に近い7㎞前後に合わせ折り返えしコースとし、走行速度はレース速度になるべく近い5.5〜6分/㎞とした。狙いはどんなレースでも距離感覚は重要なことから片道7㎞をより近く感じ、飽きずに楽に走れる感覚を脳内に焼き付けることを目的とする。


準備段階でできる限りの不安を打ち消し、自信となるイメージを重ねてきた。後はサポートを快く受けてくれた仲間のためにも最後の1人となるまで強い気持ちで走り抜くただそれだけだ。


11月19日 13時 19人がスタート

19人の侍が集結し、13時00分ラストサムライを決めるレースが開始された。


このレースには今年5月に開催され自分も出走した大会2022年第1回弘前24時間走/48時間走選手権の48時間部門で320.6㎞で優勝した千葉県の芳賀選手が出ている。サポートには医者であるお兄さんが帯同している。状態もかなり良さそうだ。共に走るこの時を待っていた。胸が高鳴る。


レースは長丁場。後半に備え省力化した走りに徹する。6:15'/㎞の速度で考えていたが5:30'/㎞位のペースで15ラップ(15時間)/100.59㎞を通過したが負担を感じない速度なのでそのまま続行する。ゴールからリスタートまでに20分以上の休憩時間が想像していた以上に体力の回復に繋がっている。敢えて速度を落として休憩時間を減らすよりも休憩時間を保つことの方が後半への温存に繋がると考える。


今回のコースは川沿いの築堤上を走るほぼフラットのコースで2か所の折り返しがある。このため1ループ当たり他の選手とは1〜2度スライドする。今年初めて参加した24時間走でも経験したが、それぞれのドラマを目の当たりにし感動を覚える。時間の経過とともに仲間意識が芽生え、すれ違いざまに声を交わすようになる。「ナイスラン!」「ファイト!」。自らに激励するかのように声援を送る。

自分自身レースでは他者と競う気持ちは持たないようにしている。あくまで己との戦であり限界までやり遂げたかどうかが肝心で、その結果として順位が付いてくる。より幸福な気持ちで走り続けることが良い結果にも繋がると信じている。



11月20日 17時 28ループ(時間)/187.768㎞

スタートから28時間が経過し2日目の夜を迎えようとしている。陽が落ちると格段に寒さが増す。0度に近い気温で川沿いのコースは風がまともに当たる。風速は6m以上あるだろうか。毎ループごとのスタートから2㎞区間位までは寒さと股関節の固まりで身体が温まるまでが厳しい。通常のレースでは寒ければ休憩をせずに走り続けていればよいがそれができない。

今年はトレイル100マイルレースで真夜中の山深い山中で風速20〜30mの暴風雨の中を単独で走った経験が生きている。如何なる悪条件下にも平然としていられる。人は困難を乗り越えるほどに強く逞しくなって行く。


残った人数は数人に絞られたが他者への期待はしていない。自分の目標までは今が丁度折り返し地点。他者が何時間走るかはその者の課題であり自分が考えることではない。



11月20日 21時 33ループ(時間)/221.298㎞

走行速度は6:15'/㎞と少し落としたが計画の7:30'/㎞を考えると予想以上に順調にきている。やはり1時間置きに20分程度の休憩はかなり回復ができるようだ。時折、標識や立木が人に見えたり水門が演歌歌手の広告塔に見えたり幻覚が見え始めているが今はまだ走りに支障が出るほどでは無い。経験上あたりが明るくなる朝方には幻覚も止むだろう。公道を走るレースや山中を走るトレイルレースでは場所によっては交通事故や滑落に繋がる危険があるが今回のコースではその心配は無い。

それにしても大会前の練習が効いているのか未だに1ループの6.706mがすぐ帰ってこれる短い距離と脳内で認識している。全くこの距離が苦にならない。明け方まで睡魔と幻覚に打ち勝てば目標の50ループ(時間)/333.5㎞は行けるだろう。

走る力の源は共に戦うサポートの仲間と、各箇所にいるスタッフや応援の方々の温かい声援だ。走者以上に寒く眠く大変なのはずなのにと思うと、とても有難く温かい気持ちになる。せめて最後までしっかりとした走りで感謝を伝えたい。


最終 11月20日 23時 35ループ(時間)/234.71㎞

34ループ目に1人脱落し、35ループ目には残ったサムライは2人となり一騎打ちとなった。相手の様子を見てきた限り数時間で決着がつくと判断し、今一度速度を上げることにした。時計を見ると5:15'/㎞位で無理なく走れている。勝利を確信し走る。

ゴール地点に着いた時、最後のゴール者であることが伝えられ35時間に及ぶ戦いを終えた。


■結果
  • 優勝
  • 35ループ(時間)/234.71㎞




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