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15インチホイール無限MR5の難関加工・フル加工を伴うリム交換

2020年8月10日
ホンダシビック(EG3)へ装着の無限MR5の15インチホイール、現状は6.0jでこれを7.0jへリム交換リバレルと、リフレッシュ再塗装ご希望で東京都からご依頼いただきました。

3本しか写っていませんが、もちろん4本お預かりです。



このホイールのリム交換は難関だらけです。

単純にリム交換で2P→3P化は特に難関ではありませんが、15インチリバースのままですと、インナーリムがサイズ的に作れないサイズだった為、それに伴いあらゆる加工が必要になり、言い方が悪くなりますが、無理矢理リム交換で2P→3P化にした、と言う感じになりました。

ちなみに、ステップリム換装で15→16インチ化ですと、大きな加工も必要なくすんなりいけますが、15インチのままが条件であったため、色々と難関加工だらけになりました。

順に解説していきます。

《リムの加工》

インナーが製作出来ないサイズのため、純正2Pリムのアウター側をカットして、インナーは純正を使うようにします。

その前に、ディスクをリムから外してみると、リムのディスクが乗っていた面は斜めになっていました。



アウターはリバレルリムに変えますが、リバレルリムの合わせ面は当然水平なので、アウター側をカットすると当時にインナー側の合わせ面を水平にします。




問題はピアスボルトのネジ穴で、これも当然斜めに空いています。

当初は、今のネジ穴とネジ穴の間に汎用性の高いネジピッチで新たにネジ穴を作ろうか、又は既存のネジ穴を貫通させてボルト&ナット式に変えようか、等々加工屋さんと相談しながら複数案を模索しましたが、どれも現状の構造的に無理があったり、加工上現実的ではなかったりで却下になり、既存のネジ穴を可能な限り掘り下げて再利用する事になりました。

ネジ穴掘り下げと言っても、アウター側カットと同時に斜めを水平にする必要もあったため、その分厚みは薄くなり、余裕のある程の厚みはなく、ピアスボルトが最低限噛むであろうギリギリの厚みしかありません。



《ディスクの加工》

ディスクのリムに乗る面も元々のリムに合わせて当然斜めになっているので、当初はこれも水平に、と言う予定でしたが、いざ現物で色々加工後を想定してみると、そもそもディスクのピアスボルトの穴がある面、特にピアスボルトの穴のザグリの面の厚みが、水平に切削出来る程の厚みが全く無い、と言う事が判明し、リムが水平性を保てる最低限の切削面を作るに留めました。

と同時に、リムが嵌る嵌合高さは、3Pになる事でリム2枚分の厚みの高さが必要になり、元々の嵌合高ではインナーリムまで嵌るには高さが足りないので、嵌合高さも高くします。



《ピアスボルトの加工》

純正のピアスボルトでは長さが足りなくなるので、社外に交換しますが、普通の当たり前の長さでは逆に長過ぎるので、仮セット&計測を何度も繰り返し、ベストであろう長さを割り出し、社外ピアスボルトを120本カットします。




《センターキャップの加工》

センターキャップは現状は、底が赤、Hマークは白で履け塗りされていたので、それを綺麗にと言う事でしたが、現状をそのまま綺麗には出来なかったので、アルミ板をレーザーカットで丸で切り出し赤に塗装、Hマークをカッティングで製作して貼り付け、最後にクリアーで閉じてオーナメントを製作しました。

この程度の事はいつもやっている事なので、これまでの加工に比べれば加工と言う程の事ではありません。





発注していたアウターのリバレルリムが入荷です。

リバレルリムも本来はリムメーカーでセンターボアもピアスの穴もあけた状態で入荷しますが、今回はそういう単純な事ではないので、センターボアもピアスボルトの穴も開いていないお皿の状態でブランクリムとして発注し、センターボア、ピアスボルトの穴開けは、インナーリム、ディスクとの現物合わせでこちらであけました。



それぞれの加工完了後に、ディスクとインナーリムの塗装に入ります。

ディスクは元の塗装を剥離、ブラスト研磨、バレル粗研磨後にグロスブラックでパウダーコートです。




ソリッドカラーは基本1コートでOKですが、黒は綺麗に維持するのが対大変なので、クリアーをオーバーコートします。

クリアーをオーバーコートする事で、さらなる光沢感と耐擦性アップも期待出来ます。




インナーリムは元々の切削素地肌からグロスブラックへ変更しますので、回転研磨で素地を整えてからグロスブラックをパウダーコートです。




アウターリムは鏡面光沢重視でクリアーレスご希望です。

リバレルリムはバフ磨きの状態で入荷しますので、そのままでも良いのですが、バフ目や擦れ跡等は少なからずあるので、自社にてバレル仕上げ研磨にかけ、バフ目や擦れ跡の無い綺麗な鏡面にします。


全ての作業完了し、組付けをします。

組付けも今回の場合は単純ではありません。

リムのディスクが乗る面は水平ですが、ディスクのリムに乗る面の水平面は必要最小限だけでなので、リムにディスクを乗せた時、ディスク外周付近は0.5㎜〜1.0㎜程リムから浮いている状態になります。

ディスクがスプリングワッシャーのような感じ、と言えば分かり易いでしょうか。

そのため、1発で規定トルクで締め切るとリムに対してディスクが水平に固定されませんので、締め付けは、対角/対角で、トルクも少しづつ複数回に分け、水平を保ちながら徐々に締めていきます。

さらに、インナーリムのピアスボルトのネジ穴深さも、たっぷり余裕がある程深くない為、必要以上のトルクをかけるとネジ山が滑ると困るので、規定トルクギリギリを狙って慎重に締めていきます。









今回はタイヤ付きでお預かりし、タイヤ組付けも行いますが、このホイール、リバース構造なのにタイヤ脱着は表からと言う特殊な形状です。

タイヤ組付け時は、ウエストクビレ部分までタイヤを落とさなければなりませんが、元々変わっている上に、今回リム交換によりさらにアウターリムの背が高くなったので、タイヤをウエストクビレまで落としつつ、組付けるのは結構大変でした。

これを知らないタイヤ屋さんが普通に組み換えをすると、リムを傷めるか、タイヤビードを切ってしまうか、何かしら痛手を負うかもしれませんね。



今回はこの内容からもご想像出来るかと思いますが、そこそこのブランドの20インチ前後の新品ホイールが購入出来る位の費用がかかりましたが、このクラスのホイールになると、ユーザー様の価値観的にはそういう問題ではないのだと思いました。

加工全般やリム交換、特に今回のようなフル加工を伴うリム交換においては、元々の構造を根本から変えてしまうと言う事になるので、いかなる場合においても保証対象外となりますが、このユーザー様は、柔軟性のあるお考えで、諸々を踏まえてご理解いただけたお蔭で、超特別なホイールが実現したと思います。